吹奏楽の知識  〜 about Wind Instrument Music 〜


 「吹奏楽」とは、どのような楽器編成の音楽かというと、ご存知の方も多いと思いますが、大きく言うと、

「管弦楽」(オーケストラ)の編成から、弦楽器を抜いた編成

であって、木管楽器・金管楽器・打楽器で構成されています。

 その木管楽器・金管楽器・打楽器の中で使われている楽器の種類は、昔から現代までいくつかの変遷がありましたが、現在、標準的な大編成の吹奏楽で使われている楽器の種類は、次のとおりです。(ちなみに、この編成が、全日本吹奏楽連盟が毎年募集している、吹奏楽コンクール課題曲の大編成部門において、実際に使われている編成です。)

<木管楽器> ピッコロ、フルート、オーボエ、バスーン(ファゴット)、クラリネット(小クラリネット・クラリネット・アルトクラリネット・バスクラリネット)、サキソホン(ソプラノサキソホン、アルトサキソホン、テナーサキソホン、バリトンサキソホン)

<金管楽器> トランペット(コルネット)、ホルン、トロンボーン(バス・トロンボーン含む)、ユーフォニウム、チューバ

<打楽器> これは種類が非常に多く、どの打楽器が使われるかはその曲によってしばしば変わるのですが、一応標準的な打楽器は、小太鼓、大太鼓、シンバル(以上3つが基本)、ティンパニー、タンブリン、トライアングル、鉄琴、木琴などです。

 そして、チューバの1オクターブ上をチューバにそのまま重ねて、オーケストラで使われている弦楽器の「コントラバス」(吹奏楽では、オーケストラの「コントラバス」と同じ楽器ですが、これをしばしば「ストリングベース」と言う)が、標準的な大編成では用いられます。

 そして、さらに特殊な楽器の部類で、非常に大きな大編成になると、まれに次の楽器も使われますが、これらは吹奏楽の作曲家・編曲家が楽譜を書くうえでほとんど用いられませんので、そもそも楽譜に楽器がないので、めったに用いられません。

<木管楽器> アルトフルート、バスフルート、イングリッシュホルン、コントラバスーン(コントラファゴット)、コントラバスクラリネット、バスサキソホン

<金管楽器> ピッコロトランペット、アルトトロンボーン、スーザフォン(スーザフォンは大型チューバであって、吹奏楽で行進曲をパレードするときに時々用いられます)

<打楽器> ウッドブロック、鞭、トムトム、カスタネット、ベル、ボンゴ、マラカス、拍子木、ほか多数(打楽器は、特殊な楽器でめったに用いられないというよりは、その曲によってしばしば使用する楽器の種類が変わるので、標準の楽器は上で示したとおりですが、使用される楽器はあくまでもその曲によります。)



 吹奏楽は、もともとその発祥は、行進曲(マーチ)の演奏であり、行進曲は弦楽器なしで、管楽器と打楽器で吹きながら行進してパレードされますので、その性格上、楽器編成や楽曲構成が管弦楽よりも吹奏楽向きの曲種であり、最も有名なスーザの「星条旗よ永遠なれ」(この曲は、第2のアメリカ国歌とまで言われている)をはじめとして、「行進曲」においては、管弦楽作品よりも吹奏楽作品のほうが、はるかに多くの実作品があります。管弦楽の行進曲も、最も有名なものではJ.シュトラウスの「ラデッキー行進曲」、そしてワーグナーの「タンホイザー大行進曲」、ヴェルディの「アイーダより 凱旋行進曲」などがありますが、多くの種類の楽曲の中で、「行進曲」と言えばまず吹奏楽です。



 「管弦楽」(オーケストラ)で使われており、「吹奏楽」では使われていない楽器といえば、当然弦楽器(バイオリン、ビオラ、チェロ)ですが、上記の吹奏楽での楽器集の中に、その逆に、「吹奏楽」で使われており、「管弦楽」(オーケストラ)では使われていない楽器が2つあります。「サキソホン」と「ユーフォニウム」です。

 管弦楽(オーケストラ)の曲を吹奏楽に編曲する場合には、このサキソホンとユーフォニウムの編曲のうえでの使い方が、非常に重要で大きなポイントとなります。

 なぜかというと、管弦楽(オーケストラ)に比べて、吹奏楽は弦楽器がストリングベースしかなく(しかも、吹奏楽でのストリングベースは、管弦楽のコントラバスのような大きな役割を果たさず、位置づけとしてはチューバの補足的な役割)、

 「管弦楽」(オーケストラ)では、通常の場合、バイオリンほか「弦楽器」が曲の中でほとんどのメロディーを受け持つ主役となり、「管楽器」や「打楽器」は曲の中で補足的な役割をすることが多い(弦楽器に比べて、曲中に休符が非常に多い)のですが(特に「交響曲」では、曲中の部分のほとんどが弦楽器であって、曲によっては管楽器は全ての楽器が使われていない交響曲もあります)、

 吹奏楽は、それに比べて、弦楽器が使われていませんので、管弦楽(オーケストラ)に比べると、全ての楽器が活躍する曲が非常に多く
 そうなると、以上のことを前提としたうえで、ここで本題である、管弦楽曲を吹奏楽に編曲するうえでの、サキソホンとユーフォニウムの重要性になりますが、

 前述のとおり、「管弦楽」で使われており、「吹奏楽」で使われていない楽器は弦楽器ですが、その逆がサキソホンとユーフォニウムですので、

 弦楽器が中心の管弦楽に比べて、吹奏楽では全ての楽器が活躍しますので、管弦楽で使われており、吹奏楽では使われていない弦楽器の部分を、その逆の楽器のサキソホンとユーフォニウムにいかに割りあてるかということが吹奏楽では必要になるためです(もっとも、サキソホンとユーフォニウムのパートを作る部分は、弦楽器の部分だけとは限りませんが)。

 実際、この「管弦楽(オーケストラ)曲を吹奏楽に編曲する」ということは、吹奏楽コンクールや演奏会などで非常に多く行われていることであって、吹奏楽コンクールでは、都道府県の中の地区大会 → 都道府県大会 → 支部大会 → 全国大会 と、上の大会になるにしたがって、吹奏楽のオリジナル曲よりも管弦楽曲からの編曲作品を演奏する団体の割合が増えており(一般的には、弦楽器のパッセージがある管弦楽曲からの編曲作品のほうが、吹奏楽のオリジナル曲に比べて難しいので)、

 各地の演奏会(コンサート)では、多くのお客さんから来ていただくために、そのためのプログラムを構成する鉄則は、「自分たちが演奏したい曲を中心とした自己陶酔型のプログラムではなく、一般の方々が知っている、有名な曲をプログラムに入れて、お客さんのための演奏会にする」ということであって、

 そうなると、クラシック系統の曲の中では、前述の「一般の方々が知っている」曲になると、どうしても吹奏楽のオリジナル曲(最初から吹奏楽の編成で書かれた曲)よりも、有名なオーケストラのクラシック曲ということになり、

 そこで、有名なオーケストラのクラシック曲を吹奏楽の編成でコンサートで演奏する場合には、そのままのオーケストラの譜面では当然編成が違って演奏ができませんので、オーケストラから吹奏楽に「編曲」が必要となってくるわけです。






−−− 小編成バンドの、吹奏楽の編成について −−−



 吹奏楽の楽器の編成は、上で示したとおりですが、上で示した編成は、一般の市民バンドや吹奏楽に力を入れている学校などに多い「大編成」であって、

 最近のスクールバンド(学校の吹奏楽部)などでは、@部活動自体をやる子供さんが従来より少なく、特に高校生は部活動をしない人もいる、Aこのところの「少子化」により、子供さんの数自体が減ってきている、の大きくは2つの理由から、学校の吹奏楽部に子供さんがあまり集まらず、吹奏楽の編成が少なくなってきていることが、吹奏楽関係者の間でかなりクローズアップされています。これは、室内楽などの演奏形態とは違い、編成上多くの楽器がある吹奏楽として、かなり大きな問題ではあります。

 そこで、全日本吹奏楽連盟でも、この実情を考慮して、平成8年の吹奏楽コンクール課題曲(平成7年の公募)から、小編成用の課題曲を設け、小編成用の課題曲はいくつかのパートをオプションパート(そのパートがなくても演奏できるパートのこと)として取り扱っています。(もちろん、「小編成用」とはいっても、オプションパートとして「そのパートがなくても演奏できる」ということですので、大編成でも演奏可能です。)大編成用の課題曲でも、コンクール課題曲としての性格上、小編成でも充分鳴るようにオーケストレーションされていますが、一応平成8年の課題曲から、課題曲作曲を公募する段階から小編成として明確にされています。

 全日本吹奏楽連盟が、平成8年の課題曲から設けられた「小編成用」の課題曲に、オプション扱いとしているパート(楽器)は、
 平成8・9年の課題曲は、2nd フルート、オーボエ、バスーン(ファゴット)、エスクラリネット、アルトクラリネット、バスクラリネット、バリトンサキソホン、4th ホルン、ストリングベースの9パート、
 平成10年以降の課題曲は、オーボエ、バスーン(ファゴット)、エスクラリネット、アルトクラリネット、4th ホルン、ストリングベースの6パートで、
 そのほかに、打楽器は平成8年以降の課題曲から毎年、大編成用の課題曲では5人以内で演奏できるようにしているところを、小編成用の課題曲では4人以内で演奏できるようにしています。

 平成8年以前にも、課題曲が「行進曲」の年の平成5・7年は、多くのパートがオプションとなり(譜面には書かれていなかったようですが)、2nd フルート、オーボエ、バスーン、エスクラリネット、アルトクラリネット、バスクラリネット、2nd アルトサキソホン、バリトンサキソホン、3rd ホルン、4th ホルン、3rd トロンボーン、ストリングベースの12パートがオプションパートとして募集されました。

 全日本吹奏楽連盟の吹奏楽コンクール課題曲のほかにも、JBA(日本吹奏楽指導者協会)という機関で、毎年「下谷賞」(したやしょう)という、吹奏楽曲の開発を目的とした作曲募集をしており、

 下谷賞でも、若干のオプションパートが設けられている年もあり、下谷賞の小編成で特筆すべき編成は、平成10年度、平成11年度の募集で、この2年は、小編成のための編作曲作品(H10)、小編成用の行進曲(H11)が、それぞれ募集され、

 そのときの編成は、H10が、ピッコロ、オーボエ、バスーン、バスクラリネット、バリトンサキソホン、3rd ホルン、4th ホルン、ストリングベースの8パートがオプションパートで、エスクラリネット、アルトクラリネット、3rd トロンボーンは使用しなく(オプション扱いにもしなく)、
 H11が、オーボエ、バスーン、エスクラリネット、バスクラリネット、バリトンサキソホン、4th ホルン、3rd トロンボーン、ストリングベースの8パートがオプションパートで、アルトクラリネットは使用しない、という編成でした。


 具体的に、全日本吹奏楽連盟の、平成8年からの吹奏楽コンクール課題曲の編成と、平成5・7年の行進曲の編成、そして平成10・11年の、JBA下谷賞の編成を表にすると、小編成がわかりやすいので、表にしてみます。               
楽 器 名 大編成 小編成 小編成 平成5・7年の、 JBA<下谷賞> JBA<下谷賞>
         (平成8・9年) (平成10年〜) 行進曲での編成 (平成10年) (平成11年)
<木管楽器>
ピッコロ
1st フルート
2nd フルート
オーボエ
バスーン(ファゴット)
エスクラリネット  
1st クラリネット
2nd クラリネット
3rd クラリネット
アルトクラリネット    
バスクラリネット
1st アルトサキソホン
2nd アルトサキソホン
テナーサキソホン
バリトンサキソホン
<金管楽器>
1st トランペット
2nd トランペット
3rd トランペット
1st ホルン
2nd ホルン
3rd ホルン
4th ホルン
1st トロンボーン
2nd トロンボーン
3rd トロンボーン  
ユーフォニウム
チューバ
ストリングベース
<打楽器>
(各年人数指定のみ) 5人以内 4人以内 4人以内 4人以内 3人程度 4人程度


               ( ◎ : 必須扱い   ○ : オプションパート扱い  空白 : 使用しない )

ということになります。この小編成は、吹奏楽コンクール課題曲、JBAの場合のみならず、「人数が少ないバンドの場合は、どの楽器を選んで割り当てたらよいか」という、一応の標準を示していると思われます。特に中学校の吹奏楽部においては、楽器の経験者が入ることが多い高校、大学、職場、一般の吹奏楽部・吹奏楽団とは違い、楽器の初心者から始める子供さんがほとんどですので、子供さんが少なくて小編成の場合は、この表を目安として楽器を選んでいただくと編成上同じ楽器にかたよらず、参考になるかと思います。

 平成8年以降の吹奏楽コンクール課題曲(課題曲集は、「吹奏楽コンクール 課題曲一覧」のページにあります)の中で、「小編成用」として、オプションパートが上記の表のように明確に定められている課題曲は、

平成 8年:課題曲T 管楽器のためのソナタ (これは特別小編成で、打楽器を除く合計で16パートです)
       課題曲U 般若
       課題曲W はるか、大地へ

平成 9年:課題曲U マーチ「夢と勇気、憧れ、希望」
       課題曲W ラ・マルシュ

平成10年:課題曲T 童夢
       課題曲U 稲穂の波
       課題曲V アルビレオ
       課題曲W ブラジリアン・ポートレート

平成11年:課題曲T マーチ・グリーン・フォレスト
       課題曲U レイディアント・マーチ
       課題曲V 行進曲「エンブレムズ」
       課題曲W 行進曲「K点を越えて」

平成12年:課題曲U をどり唄
       課題曲V 胎動の時代 〜 吹奏楽のために
       課題曲W 吹奏楽の為の序曲

平成13年:課題曲T 式典のための行進曲「栄光をたたえて」
       課題曲U 平和への行列
       課題曲W 行進曲「SLが行く」

平成14年:課題曲U 追想 〜ある遠い日の〜
       課題曲V ミニシンフォニー 変ホ長調

平成15年:課題曲V マーチ「虹色の風」
       課題曲W マーチ「ベスト・フレンド」

平成16年:課題曲T 吹奏楽のための「風之舞」
       課題曲U エアーズ

平成17年:課題曲V ストリート・パフォーマーズ・マーチ
       課題曲W サンライズマーチ

平成18年:課題曲T 架空の伝説のための前奏曲
       課題曲W 海へ ... 吹奏楽の為に

平成19年:課題曲U コンサートマーチ「風と光の通り道」
       課題曲W マーチ「ブルースカイ」

平成20年:課題曲U マーチ「晴天の風」

平成21年:課題曲U コミカル★パレード

平成22年:課題曲U オーディナリー・マーチ
       課題曲V 吹奏楽のための民謡「うちなーのてぃだ」

平成23年:課題曲T マーチ「ライヴリー アヴェニュー」
       課題曲V シャコンヌS

平成24年:課題曲T さくらのうた
       課題曲U 行進曲「よろこびへ歩き出せ」
       課題曲W 行進曲「希望の空」

平成25年:課題曲U 祝典行進曲「ライジング・サン」
       課題曲V 復興への序曲「夢の明日に」
       課題曲W エンターティメント・マーチ

平成26年:課題曲U 行進曲「勇気のトビラ」
       課題曲V 「斎太郎節」の主題による幻想


平成27年:課題曲U マーチ「春の道を歩こう」
       課題曲V 秘儀III −旋回舞踊のためのヘテロフォニー


平成28年:課題曲T  マーチ・スカイブルー・ドリーム
       課題曲U 
スペインの市場で

平成29年:課題曲U マーチ・シャイニング・ロード
       課題曲V 
インテルメッツォ

平成30年:課題曲U マーチ・ワンダフル・ヴォヤージュ
       課題曲V 
吹奏楽のための「ワルツ」

平成31年:課題曲U マーチ「エイプリル・リーフ」
       課題曲V 
行進曲「春」



です。平成5・7年の行進曲は、全曲が上記のオプションパートでした。


 私が今までに吹奏楽コンクール課題曲作曲公募に応募した曲は、大編成・小編成のいずれを選んでいるかですが、私は中学生の頃は小編成のバンドにおり、そういった経験から、小編成に応募する年が多く、

平成7年  吹奏楽のための爽やかなマーチ風小序曲 = 大編成
平成8年  行進曲「未来への躍進」 = 小編成
平成9年  オーバーチュア・フォー・ビギナーズU = 小編成
平成10年  壮麗なマーチ = 小編成
平成11年  ウインド・オーケストラのための交響的音詩 = 大編成
平成12年  行進曲「虹のハーモニー」 = 小編成
平成13年  陽気なポルカとワルツ = 小編成
平成14年  行進曲「希 求」 = 小編成
平成15年  ポルカと随想 = 小編成
平成16年  ブリリアント・マーチ = 小編成
平成17年  春のポルカとロマンス = 大編成
平成19年  行進曲「新たなる人生へ」 = 小編成
平成20年  マーチ・フォー・ビギナーズ = 小編成
平成21年  マーチ「春を迎えて」 = 小編成
平成23年  躍動するポルカ = 小編成
平成24年  ピクニック・マーチ = 小編成
平成25年  清らかな行進曲 = 小編成
平成26年  軽快なポルカ = 小編成         でした。


 私が属する地域の「新潟県」の吹奏楽コンクールの制度は、中学校の部と高校の部は、Aの部(中学校=50人以内、高校:55人以内で、課題曲・自由曲演奏、全国大会に通じる)Bの部(30人以内で、自由曲のみ演奏、最高が東日本学校吹奏楽大会)があり、吹奏楽コンクールに出場しようとする学校は、その2つの部のうちいずれか一方を、各学校の吹奏楽部の実情(人数や実力など)に合わせて選んで出場することになっていますが、

 平成9年の新潟県吹奏楽コンクール(新潟県中越地区の吹奏楽コンクールでは平成7年)から平成23年の新潟県吹奏楽コンクール、新潟県上中下地区吹奏楽コンクールまでは、中学校・高校の部に「B小編成の部」(20人以内で、自由曲のみ演奏、最高が新潟県大会まで)という部があり、出場しようとする学校は、その3つの部のうちいずれか1つの部へ出場するという制度になっていました。これも学校の吹奏楽部が近年小編成化していることへの対応であって、年を追うごとに、この「B小編成の部」に出場する学校が新潟県では増えていっていました。平成24年から、B小編成の部は廃止されました。


  小編成の吹奏楽で演奏するうえで最も大切なことは、販売されている吹奏楽の楽譜は、全てのパート(楽器)が書いてあり、あらかじめ小編成用として書かれているわけではないので、

 「楽器が足りない部分のパートがメロディーラインなどを受け持つ場合は、ほかの楽器(パート)に移して補って演奏する」

ということであり、そうしないで、小編成の吹奏楽部で子供さんがいるパートだけで楽譜をそのまま演奏してしまうと、楽譜に楽器が書いてあってもそこを吹く子供さんがいない場合、メロディーラインや対旋律などの、音楽の構成上重要な部分が消えてしまい、聞いているうえで不自然になることがあるためです。

 この「必要により、他の楽器で補って演奏する」ということは、その学校の吹奏楽部の指導者(指揮者の先生など)の方々が指示して行うべきことであり、平成13年の新潟県中越地区の吹奏楽コンクールで、審査員の先生からのB小編成の部に対する全体的な審査講評の中で、「それをやっておらず、今の生徒さんの楽器でそのパートをそのまま吹いている学校もありましたので、音楽の流れが不自然になり、メロディーが聞こえていなかった学校もありました。B小編成の部に出場しようとする学校の吹奏楽部の先生方は、この点についてご指導していただきたい。」ということが言われました。

 しかしながら、「編曲」をやる私の持論としては、小編成であっても、楽器の移し替えしだいで充分音楽になる」ということであって、現実に、室内楽などでは、弦楽四重奏(4人)、弦楽五重奏(5人)などでもすばらしい音楽曲が数多くあり、小編成が大編成に比べて劣っているなどということは決してないと思っています。

 現に、今までの新潟県中越地区大会の吹奏楽コンクールの中学校B小編成の部で、人数が20人までのところを、わずか8人で出場し、20人のフル人数で出場した学校を押しのいて見事「金賞」になり、新潟県大会に駒を進めたすばらしい学校がありました。もちろん楽器の移し替えがうまくできていたことは、言うまでもありません。

 結局は、大編成であっても小編成であっても、そのバンドのテクニックであって、小編成でも個々の技量がしっかりしていれば、いくらでも良い音楽になり、前述のように、8人が20人よりも高い賞をコンクールで受賞するということもあるわけです。

 いずれにしても、これからの小編成の吹奏楽の課題は、現在ある楽器だけで既存の曲をどのように楽器を移し替えて補って演奏するかということであって、これは各学校の指導者の先生方に課せられた課題であり、指導上の重要なポイントとなる、と私は考えています。




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