リコーダーは、義務教育(小学校・中学校)で教育用楽器として広く用いられ、平成12年からは義務教育の中で選択科目になりましたが、平成11年までは、小学校3年生から音楽の時間で「必修楽器」として取り扱われていました。誰しも一度は学んだことのある楽器と思います。
リコーダーは、義務教育ではソプラノリコーダーとアルトリコーダーの2種類しか取り扱わないので、種類はこの2種類しかないのでは・・・? と思っていらっしゃる方々も多いのではないかと思いますが、実は8種類(+最近発売されたもう1種類)あり、高い音が出て楽器が小さいものから順に、
クライネソプラニーノ、ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テナー、バス、グレートバス、コントラバス
といいます。そして、上記の「最近発売されたもう1種類」というのは、コントラバスのさらに低音部の楽器として、全音から「サブコントラバス」という超大型リコーダーが開発され、発売されました。
リコーダーは、上記の8種類+1種類が、次の2つのグループに分かれ、同じグループの中では同じ指使いをするとそれぞれちょうど1オクターブずつ音程が違っており、高音楽器から低音楽器まで順番に、それぞれのグループの中で1オクターブずつ低音に下がります。
<グループA> クライネソプラニーノ、ソプラノ、テナー、グレートバス、サブコントラバス
<グループB> ソプラニーノ、アルト、バス、コントラバス
そして、代表的なソプラノとアルトでは、同じ指使いをするとアルトのほうが完全5度(音階音が5つ)音が低く、指使いは上記の8種類+1種類が全部同じ指使いですが(部分的に違うところもありますが)、
クライネソプラニーノの5音下がソプラニーノ、ソプラノの5音下がアルト、テナーの5音下がバス、グレートバスの5音下がコントラバス、そしてグレートバスの1オクターブ下がサブコントラバス
という仕組みになっています。
それでは、上記8種類+1種類の各楽器について、高音部から順に解説すると、
<クライネソプラニーノ> 略号:Ksni これは、リコーダー族の中で最も高い音が出る楽器で、楽器が非常に小さく、音も高いので、ふだんはあまりリコーダーアンサンブル(リコーダーの合奏)で使われません。リコーダーオーケストラ(8種類+1種類の楽器全部を用いてリコーダーの合奏をすること)の中で、部分的に高音が出てくる場面で時々用いられます。
<ソプラニーノ> 略号:Sni これは、リコーダーアンサンブルで、高い音が多く出る曲などに使われます。ソプラノでは出しにくい高音が出る曲など。
<ソプラノ> 略号:S 皆さんが最もよく知っている、リコーダーで最も有名な種類です。小学校3年生の義務教育では、まず誰でもソプラノから入り、習い始めます。ほとんどのリコーダーアンサンブル曲に用いられ、曲の中ではメロディーラインをよく受け持ちます。
<アルト> 略号:A これも、ソプラノの次に義務教育で取り扱う、ソプラノと並んでリコーダーでは代表的な種類です。リコーダーアンサンブルではソプラノと並んでほとんどの曲に用いられます。ソプラノでは音域的に低音が出ない曲では、アルトを一番高音の楽器として、アンサンブルされることもあります。
<テナー> 略号:T これは、高校生の音楽の授業などで時々用いられます。ソプラノの1オクターブ下で、ソプラノ・アルト・テナーで3重奏として用いられることもよくあります。この「テナー」から下の楽器は、楽器の一部に指穴を押さえるためにキーがついており、テナーは右手の小指にあたる指穴だけにキーが1つついています。以下、低音楽器になるにしたがって、キーの数が増えていきます。
<バス> 略号:B これも、高校生の音楽の授業などで時々使われます。リコーダー族の低音部としては非常に大切な楽器で、リコーダーアンサンブルの重奏では、「ソプラノ・アルト・テナー・バス」の4本による四重奏が最も一般的です。リコーダーコンテストでも、重奏部門の演奏はこの編成による四重奏が最も多く演奏されています。
<グレートバス> 略号:GB これは、クライネソプラニーノと同様、リコーダーオーケストラで使われることがほとんどで、重奏のアンサンブルではあまり用いられません。
<コントラバス> 略号:CB これは、グレートバスと同じ低音属ですが、バスのちょうど1オクターブ下の音が出るので、リコーダーオーケストラだけではなく、アンサンブルの重奏で、バスのパートを1オクターブ下で重ねて、時々用いられます。「ソプラノ・アルト・テナー・バス・コントラバス」という編成で、バスの1オクターブ下をバスと同じ楽譜でコントラバスで吹く、という手法が、リコーダーアンサンブルではよくあります。
<サブコントラバス> 略号:SCB これは、全音楽譜出版社というメーカーからごく最近開発、発売されたリコーダーの種類で、コントラバスのさらに下の音が出ます。発売されたのがごく最近ですので、この楽器を使った楽譜はまだほとんどありません。
そして、リコーダーアンサンブルでは、「4フィート・8フィート」という技法がしばしば使われ、これはどういうことかというと、
4フィート:ソプラノ・アルト・テナー・バス
8フィート:テナー・バス・グレートバス・コントラバス
のそれぞれ4つの楽器を指し、それぞれのグループの中で順に、
ソプラノの1オクターブ下はテナー、アルトの1オクターブ下はバス、テナーの1オクターブ下はグレートバス、バスの1オクターブ下はコントラバス
ですので、四重奏の最も代表的かつ一般的な楽器編成が「ソプラノ・アルト・テナー・バス」であることは上記の中ですでに説明しましたが、この編成が「4フィート」であり、「8フィート」の編成は「4フィート」をそのまま1オクターブ低くした楽器での編成であって、
「4フィート」+「8フィート」という楽器編成にして、「8フィート」の楽器でそのまま「4フィート」の楽器のパートを「重ねて」吹くと
(すなわち「8フィート」のテナーは「4フィート」のソプラノのパートをそのまま吹き、以下同様に、バスはアルトのパート、グレートバスはテナーのパート、コントラバスはバスのパート)、
「ソプラノ・アルト・テナー・バス」の最も一般的な四重奏の編成の曲が、この4本だけに比べて実に豊かな響きになり、楽譜や指使いも8フィートに属する楽器は4フィートのところを順にそれぞれそのまま吹けばいいので、
この「4フィート+8フィート」という楽器編成も、実際のリコーダーアンサンブル、リコーダーコンテストなどでしばしば用いられる編成です。